PRODUCER DIALOG

監督でも、脚本家でもない。
プロデューサーっていったい、どんな人なのか?

その答えを探るため、同期入社で映画、アニメの現場でそれぞれ活躍中の2人のプロデューサーにお互いのキャラクターや仕事の進め方を語り合ってもらいました。

※このコンテンツは2021年に作成されたものであり、
社員の所属部署、役職は2021年当時のものです。

PROFILE

  • 映像本部 映画企画部 映画製作室

    S.U.

  • 映像本部 映像事業部 映像企画室 第一企画制作グループ

    K.T.

PRODUCER DIALOG

プロデューサー対談

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東宝のプロデューサーってどんな人?何をするの?

Q,お互いの第一印象は?

S. U.

僕たちの最初の出会いは、実は就職活動中。東宝の前に他社のグループ面接で一緒になったんです。あの時のこともよく覚えているし、気の合う感じは初対面からあったね。

K. T.

U君は、何でも器用にこなすしコミュニケーションも上手で、誰にでも好かれる人。世の中にはこういう男もいるんだなぁと、内定者の時からずっと思っていました。若手時代はお互い地方支社への転勤を経験していて、それぞれの勤務地に遊びに行ったりしましたね。気が合うし、今でも一番仲が良い同期です。

Q,入社当時から
「プロデューサー」に
なりたいと

思っていましたか?

S. U.

僕は「映画が好きだから映画会社」というシンプルな入社動機で、当時は「是が非でも自分で作品を作りたい」というタイプではなかったと思う。対してT君は本当に映画をよく見ていたし、アニメへの愛があり、「作りたい」と言い続ける人。今、同じプロデューサーの仕事をしていても、自分とのアプローチの違いやタイプの違いは感じています。

K. T.

たしかに僕は「絶対に企画製作をやりたい」と入社当時から言っていました。昔からぼんやりと「自分はプロデューサーになるのかもしれない」と思っていて、それはプロデューサーという仕事があると知った時からずっとそうです。幼少期から演劇にも馴染みがあったし、中学時代はアニメ漬け、大学時代はサークルにも入らずずっと映画を観ていました。将来の不安とかもそんなになくて、ただエンタメが好きでい続けた結果、東宝に流れ着いた感じです。最初に演劇の部署に配属されたのも、昔から舞台に親しんでいたからだと思います。

S. U.

入社後に関西支社と九州支社で映画宣伝の仕事を経験して、このままずっと宣伝をやるのかなと思っていました。宣伝をやっていて気がついたことがあって、それは映画って「生活圏も文化圏も違う人を相手に、ひとつの商品で短期間に何十億単位で稼ぐ」ってこと。稀有なビジネスモデルだし、「全国的に面白いと思ってもらえるものを作る」って夢があるなと思って製作にも興味を持ちました。

K. T.

宣伝時代のU君の「人の間に立つ」仕事の仕方を見て、「プロデューサーに向いている」と思った人がいたんじゃないかなと思う。そうやって誰かが見てくれて、適材適所に配置するのがうちの会社の特徴なんですよね。僕自身も、今はアニメプロデューサーをまとめる仕事をしながら、「他にこの仕事に向いてそうヤツがいないか」といつも若手を見ています。

Q,プロデューサーの仕事、入社前とギャップはある?

S. U.

自分が学生の時は正直、映画のプロデューサーは華やかな仕事だと思っていました。俳優と一緒にタキシード姿でレッドカーペットの上を歩くイメージ。でも実際には、それはほんの一瞬か、ほとんどなくて、ずっと汗かいて走り回っています(笑)

K. T.

僕はアニメ志望だったからか、もともとあまり華やかなイメージはなかった。学生時代にアニメの制作会社に関わったことがあったので、地味さは覚悟できていたのかもしれない(笑)。「プロデューサー」の仕事として、制作のイメージをもたれることがあるんですけど、僕らがやっているのは実際にアニメ本編を作る「制作」というより、ビジネス全体を考える「製作」プロデューサーのほう。一番最初から企画にかかわり、最後まで面倒見る。関わる範囲は一番広いですね。映画の方は?

S. U.

作品によっても違うけど、プロデューサーである自分が中心になって作っていくことになるね。監督やキャストも自分が決めて依頼する。学生の頃は、映画づくりは、監督がほとんどの決定権を持っているんだろうと思っていたけど、プロデューサーになってみると、ほぼ全ての工程で自分自身の決断が求められますね。

K. T.

同じく。シナリオづくりなんかもその一部ですね。

具体的な仕事の進め方

Q,アニメの作品づくりは、どのように始まるのですか?

S. U.

T君は、どちらかというと「これがやりたい」というものから始めるタイプなんじゃない?

K. T.

そうだね。必ずしもマーケティング的な逆算からだけではなく、自分のモチベーションが一番の原動力になっている節はある。オリジナルで製作した『HELLO WORLD』では、最初に僕自身に「CGアニメでSFをやりたい」という気持ちがあった。そんな時、ずっと組みたいと思っていた監督が「CG作品を作ってみたい」と話しているインタビュー記事を読み、一緒にやりましょうとお声がけしたんです。当時CG作品でスマッシュヒットを飛ばしていたスタジオを監督に紹介して、ゼロからSFが書ける人ということでSF小説家に声をかけて……という流れでスタッフが決まっていきました。

S. U.

ちなみに、アニメってどれくらい脳内に映像があるものなの?実写の場合は、ある程度の輪郭が見えてないと予算も立てられないんだけど、アニメって想像を超えていかないと面白くならないような気もして。どのくらい輪郭が見えているのかをぜひ聞いてみたい。

K. T.

見えているともいえるし見えていないとも言える……ある程度までは見えているんだけど、製作の過程でずれていくんだよね。それが面白くもある。一度、ある作品を他の監督に見てもらって「すごく君らしい作品だね」って言われたんだけど……

S. U.

それってどういう意味なのか気になるね。

K. T.

その時の言葉は、あまり良い意味ではなくて。「あなたの頭の中で完結しちゃってる気がした」「僕ならもっとロジックを超えていくものにしたい」って言うんですよ。 プロデューサーの中でイメージができすぎちゃっていてもだめなんだよね。人に任せて、予想もつかないものを作品に呼び込んでいくことも必要だと最近は思っています。

Q,では、映画の作品づくりは?

S. U.

プロデューサーは基本的に「2者の間をつなぐ」仕事と言えると思います。監督と脚本家だったり、スタッフとキャストだったり、いろいろな「間」をつないでよい形を作りながら、作品としてもビジネスとしても成立するように走り回る。製作としてはビジネスとしてどう成功させるか会社と会社の間に入り、企画としてはお客様の求めるものの間でどうすれば喜んでくれるかを考える。どちらも成立するように考えるわけです。

K. T.

「間」って良いキーワードだね。

S. U.

で「どんな仕事なの?」って聞かれたら、プロデューサーの仕事ってフランクに言うと、「深夜の居酒屋トーク」みたいなところがあると思うんですよね。 「あの俳優がこんな役を演じたら面白いんじゃない?」って友達と語り合った経験って誰しもあるんじゃないかと思うんですけど、あの延長線上ですね。深夜の1時2時に「これは面白い!」と盛り上がったことって、何かの熱量がある。キャスティング・スタッフィングする時とかは、「あの深夜2時の熱狂が再現できるか?」という観点は頭の片隅にあります。
たとえば『屍人荘の殺人』は「神木隆之介君と中村倫也君と浜辺美波ちゃんが探偵と助手として推理合戦してるの楽しそう!ずっと見てられるよね」というところから始まりました。本格時代劇を作るにあたって「『大河俳優揃い踏み』って見てみたくない?」というところからの作品もありました。ほら、ちゃんと形になっています!

K. T.

そういえば10年くらい前、ドライブしながらずっと「俺たちの夢企画」の話をしていたことがあったよね。たとえば僕らが高校生だった時代の、ファッション、音楽、アートとかいろいろなカルチャーが詰め込まれた青春ものを作れないか、とか。

S. U.

自分たちがそういうカルチャーが好きで始まった話だったけど、そういう普段の会話の盛り上がりが仕事につながっているということだね。

K. T.

そうそう。でも、今考えたらあの企画はナイかな(笑)。

S. U.

ナイ(笑)。でも、そういうボツネタが、実際に作品になった企画の何倍、何十倍もありますね。

若手に期待したいこと

Q,やはり、数多くのボツネタを経て企画が実現しているのですね?

K. T.

確かにボツネタは多いし、実現可能性を考えた企画も大事だけれど、たまに、そういう妄想とか夢物語みたいなものが形になったような作品があって、嫉妬することもありますよね。「それ自分がやりたかった!」って。

S. U.

自分の頭の中で、現実的な前提や固定概念があったなって気づかされるよね。

K. T.

案外実現できることもありますからね。

S. U.

たとえばある作品で、先輩プロデューサーが世界的な作曲家に音楽を依頼することを発案したんです。「流石に受けてくれないんじゃないか」なんて思っていたんですけど、二つ返事で受けて頂いたんですよ。有名な写真家にスチール撮影を頼んだ時も、撮影日にも柔軟に対応して頂いたうえに、俳優ごとの撮り方のアプローチが本当に想像のはるか上で素晴らしくて、「なんでこの人たちに『頼めない』と思っていたんだろう」と、まさに固定観念が覆りました。

K. T.

僕らみたいにある程度経験値を積んだからこそ、現実的な判断をしちゃうこともあるよね。若手の方が誰よりもバカで突飛なことを言える。

S. U.

プロ同士の間に垣根はないですしね。そういうチャレンジを若い人が面白がってくれたら、未来の映画界にとっても良いことだと思います。

Q,固定観念にとらわれずに発言していくことが大事なんですね。

K. T.

東宝の社風として、突飛な発想を潰されるということはないですね。「面白いこと考えた人の勝ちー!」っていう大喜利をずっとしてる感じはあります。

S. U.

同感です。例えば若手の頃、そんな役割を求められたようなことって、あった?

K. T.

今思えば、自分がアニメ部門に異動になって初めての企画会議がそうでしたね。「まずは様子見」と思って参加していたら、隣の席の先輩が「企画志望っていうくらいだから手ぶらじゃないよね?」と迫ってきて。初日にそう言われたのは、やっぱり若手だから言えるアイデアを求められてたのかなと思います。ちなみにその時は『ペンギン・ハイウェイ』という小説の話をして、その作品は周りまわって結局アニメ映画にすることができました。若手には、実現可能性はともかくアイデアを出してほしいと思っています。

S. U.

「作品として」成立するには2つしかないと僕は思っていて、企画者一人の「好き」または「執念」が詰まっていること。それくらい、一人の感情が強烈にこもっていることが作品には必要なんです。

K. T.

「好き」と「執念」か、たしかに。

S. U.

作品を作るだけが企画じゃないってことも言っておきたいですね。「こういうポスターが良い」「こういうグッズが良い」などなど、携わるいろいろなセクションの皆さんの「好き」か「執念」が良い作品を作ることにつながるし、作品を押し上げる、ヒットさせる力になる。若手の「好き」や「執念」はめちゃくちゃ求められていると思います。

東宝のプロデューサーの醍醐味とは?

Q,多くのプロデューサーの業務の中で、好きなのは?

S. U.

僕自身が演じたり撮ったりする力があるわけじゃない。でも、自分の脳内にあるものが、多くの人の総力によって具現化された瞬間の「そうそうこれ!」という感覚、つながった!っていう瞬間は最高ですね。

K. T.

本当にそうだねえ。

S. U.

自分の妄想が形になった時の、最初の観客になれるわけですから。

K. T.

役得だよね、映画ファン冥利に尽きます。僕は企画書を作ることやプレゼンも大好きですね。絵を描けるわけでも楽器を弾けるわけでもない自分が唯一できるのが考えることであり、「言葉を尽くす」こと。作れないからこそ考え抜く。人に伝える。それが好きなんです。

S. U.

さっきの居酒屋トークもそれだしね。

K. T.

あと自分の人生のいろんなことが集約して結実していくっていうのもこの仕事の面白いところだと思う。例えば僕の例だと、ずっとジャズの世界を学びたいなと思っていて、そんな興味がそのまま企画というかたちで仕事になっていくっていうのは、他の仕事だとあまりないことなのかもしれないなと思います。

Q,どんな人に入社してほしい、一緒に働きたいですか?

S. U.

僕はミーハーって言葉が好きなんですよ。ミーハーでいることは素晴らしいことだと思っていて、その熱狂感や間口の広さは映画がヒットする上で必要なこと。そういう意味で、感覚的に閉じていないほうがこの会社の仕事を楽しめるんじゃないかと思います。

K. T.

オタクとミーハーのバランスは大事だよね。僕だってオタクとして扱われがちですけど自分ではミーハーの範疇だと思ってますよ。あとはやっぱり、なんと言ってもまず映像、映画、演劇を愛している人であることが大事。共通言語は「好き」だと思う。

S. U.

やっぱり「好き」と「執念」なんですよ。

K. T.

そう、だから僕は「好き」がある人に来てほしい。その「好き」を出しても大丈夫な会社だよって、言いたいです。

S. U.

そんな皆さんと一緒に妄想トークをしたいですね!笑

K. T.

皆さん、就活は大変だと思いますが、いろんな業界の人と話せるし、僕らみたいにその先もずっと続くような出会いもあるし、人生の糧になるのは間違いないです。頑張ってください!